2020年

問題86光と照明に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)光色は,色温度が高くなるにしたがって,赤い色から青っぽい白色に変化する.

(2)事務所における文書作成作業においては,製図作業よりも高い維持照度が求められる.

(3)光色が同じであっても,蛍光ランプとLEDとでは分光分布が異なる.

(4)観測者から見た照明器具の発光部の立体角が大きいほど,照明器具の不快グレアの程度を表すUGRの値は大きくなる.

(5)基準光で照らした場合の色をどの程度忠実に再現できるかを判定する指標として,演色評価数が用いられる.

2020年

問題86正解(2)頻出度AAA

JIS Z9110 照明基準総則,JIS Z9125 屋内照明基準などによれば,文書作成作業時の推奨維持照度は500 lx,製図の場合は750 lxとしている.(2020-86-1表参照).

2020-86-1表JIS維持照度
維持照度[Lx] 作業,執務空間,共用空間
750 設計,製図,役員室,専務室,玄関ホール(昼間)
500 キーボード操作,計算,診察室,印刷室,電子計算機室,調理室,集中監視室制御室,守衛室,会議室,集会室,応接室
300 受付,宿直室,食堂,化粧室,エレベータホール
200 喫茶室,オフィスラウンジ,湯沸室
150 階段
100 休憩室,倉庫,廊下,エレベータ,玄関ホール(夜),玄関(車寄せ)
50 屋内非常階段

階段150Lx > 廊下100Lxがよく出題される.階段が暗いと危ない.

-(1) 光にも色があり,蛍光灯でも種類によって光色の違いがある.光の色は,380~780nmの可視域のうちどの波長域に分布しているか(分光分布)によって決まる.

ランプなどの光源の光色は「相関色温度」によって数値的に示される.相関色温度は仮想的な黒体(完全放射体)を熱したときの温度と放射する比色の関係を基準とし,単位は絶対温度K(ケルビン)である.

黒体の分光分布は温度により変化し2,000K程度では波長の長い域(赤い光)が多く,色温度が高くなるに連れて波長の短い域(青い光)が増加し10,000Kでは青っぽい白色の光となる(2020-86-2表参照).

2020-86-2表身近な光の相関色温度[K]

ろうそく(パラフィン)の炎 1,900
高圧ナトリウムランプ 2,100
蛍光ランプ(電球色) 2,800
白熱電球(I00W) 2,850
地上から見た満月 4,125
蛍光ランプ(白色) 4,200
メタルハライドランプ高演色型 4,300
蛍光ランプ(昼白色) 5,000
地上から見た天頂の太陽 5,250
日中の北窓光 6,500
蛍光ランプ(昼光色) 6,500
曇天の空 7,000
青天の青空 12,000

-(3) 同じ光色でも,発光メカニズムが違う蛍光灯とLEDの分光分布は異なる(2020-86-1図参照).

2020-86-1図蛍光灯とLEDの分光分布
蛍光灯とLEDの分光分布

出典(蛍光灯)宮崎技術研究所 宮崎誠一
http://www.miyazaki-gijutsu.com/series4/densi0913.html

出典(LED)株式会社マイクラフト
http://www.my-craft.jp/html/aboutled/led_supekutoru.html
を基に作成

-(4) UGR(Unified Glare Rating,統一グレア指数)を求める式(岩崎電気株式会社・ライティング講座)(いささか複雑)をみると,観測者から見た発光部の立体角が大きいとUGRも大きくなる.

-(5) 光がもつ「物体の色の再現能力」は, JISで定められた演色評価数Raで示される.基準光で照らされた場合を最大100とする.高演色LEDのRaは90以上である.