2022年
問題166蚊の防除に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.
(1)ULV処理は,一般に成虫に対する速効性は低い.
(2)チカイエカ対策として,浄化槽の通気管に防虫網を設置する.
(3)浄化槽内の防除効果は,柄杓によりすくい取られた幼虫数によって判定可能である.
(4)ライトトラップや粘着トラップで捕獲した蚊の数は,維持管理水準を判断するのに有用である.
(5)クレゾールなどを含む殺虫製剤は,浄化槽内の微生物に影響を与える.
2022年
問題166正解(1)頻出度AAA
空間処理であるULV処理は成虫に対して速効性が高い.
蚊の防除はつぎのとおり.
1.浄化槽・排水槽のチカイエカ防除
1)幼虫(ボウフラ)対策
(1)排水槽内の幼虫の生息状況は,柄杓などによりすくい取られた数により調査する(柄杓すくい取り法).
(2)有機りん剤の乳剤を水槽の容量に対して1ppm,もしくは昆虫成長制御剤のピリプロキシフェンを0.05~0.1ppm,メトプレン,ジフルベンズロンなら1ppmになるように水槽に撒く.
(3)昆虫成長制御剤(IGR)は,昆虫及び多くの節足動物の変態など生理的な変化に影響を与える.
羽化阻害剤とキチン合成(脱皮)阻害剤の2種類があるが,幼虫に対しての効果は最終的に死に至らせるが速効的ではなく,成虫に対してはいずれも効果がない.
(4)浄化槽では,浄化微生物に影響のある油剤や殺菌作用のあるオルソ剤(オルトジクロロベンゼンなど)やクレゾールなどは使用できない.乳剤の界面活性剤や有機溶剤の影響も考えられるので,濃度に注意する.
2)成虫対策
(1)排水槽内の成虫の発生状態は,ライトトラップや粘着リボン(粘着トラップ)による捕獲数により調査する.
(2)煙霧・ULV処理
煙霧機やULV機を用いてジクロルボスやピレスロイド剤の薬剤を霧状にして処理する.煙霧処理であればジクロルボス0.3%油剤を1m3当たり1~3mL処理する.
煙霧・ULV処理は速効性が高いが,残効性は期待できない.
(3)蒸散処理 槽内が密閉空間であることを利用して,ジクロルボス樹脂蒸散剤を10m3当たり1本の割合で吊るす.蚊の成虫対策として,1~3カ月間有効である.
2.残留処理
成虫が止まる壁面などに残効性の高い有機りん剤やピレスロイド剤を1m2当たり50mL散布する.
3.チカイエカでは殺虫剤抵抗性の発達が報告されているので,効果に疑問がもたれる場合には,殺虫剤感受性に対する調査を実施し,異なる系統の殺虫剤への変更を検討する.
4.チカイエカは,排水槽等に通ずる通気管や排水溝,マンホール等の隙間,処理施設に通じる扉の隙間等が侵入経路となるので,防虫網,網戸の設置状況,扉の開閉状況や隙間等について調査して対応措置をとる.