2022年
問題169ゴキブリの防除に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.
(1)空間処理とは,ゴキブリ類の気門から成分を取り込ませ,主に呼吸毒として作用させる処理法である.
(2)乳剤とマイクロカプセル剤の残効性を同条件で比較すると,乳剤の方が長い.
(3)チャバネゴキブリでは,殺虫剤抵抗性と喫食抵抗性の両方が報告されている.
(4)残留処理では,散布面の素材により散布量を調整する必要がある.
(5)ゴキブリ指数とは,調査期間中における1日1トラップ当たりの捕獲数をいう.
2022年
問題169正解(2)頻出度AA
マイクロカプセル剤は,乳剤の主に残効性を調整(延長)するために考案された.
-(1) 殺虫剤の虫体侵入は経口・経皮・経気門の3つの経路がある.空間処理した殺虫剤は,昆虫の呼吸器である気門を狙った呼吸毒ということができる.
-(4) 残留処理の標準的散布量は,壁面等1m2当たり50mLであるが,壁面素材の吸湿性や,凹凸の多寡など散布量を調節する必要がある.
ゴキブリの防除は次のとおり.
薬剤処理とともに,餌になるもの放置しない,生息場所をなくすことが重要である.
1.総合防除
1)環境の整備,清掃に努め,餌になるもの放置しない,生息場所をなくすことで発生を最少に抑え,発生調査に基づき,状況に合った防除対策を講じる.
2)ゴキブリの生息状況調査で生息場所(個所)と生息密度を知ることが重要である.駆除率の算出には,1日,1トラップ当たりのゴキブリ捕獲数であるゴキブリ指数を用いる.
3)薬剤使用にあたっては環境に配慮し,少ない薬量で,労力,経済負担を少なくする.
4)発育期間が長いため,ハエや蚊と比較して徹底駆除後における生息密度の回復にかかる時間も長い.
5)チャバネゴキブリでは薬剤抵抗性や毒餌の喫食抵抗性が各地から報告されているので,効果に疑問がもたれる場合は,使用薬剤の変更などを検討する必要がある.
2.薬剤処理
1)残留処理
ゴキブリの行動習性を利用した基本駆除法.残効性の高い有機リン剤やピレスロイド剤を壁面等1m2当たり50mL散布するのが標準である.処理面を歩き回ったゴキブリは,薬剤の残滓を経皮的に取り入れ死亡する.ゴキブリの通路やかくれ場所となりやすい家具の隅や隙間などに殺虫剤処理を重点的に行う.
薬剤は,生息場所を中心にある程度範囲を広げて処理するのが効果的である.
2)空間処理(直接処理)
生息密度が高い場合は煙霧,燻煙処理,蒸散,ULV処理(ペルメトリンなどのピレスロイドの専用乳剤がある)などによって室内に薬剤を充満させ30分~1時間部屋を閉め切り,隅に潜んでいるゴキブリを直接殺す.生息密度が高い場合に速効性を期待して用いる(いずれも残効性は期待できない).部屋はできるだけ密閉し,潜み場所となる引出し,戸棚などは開放する.
ピレスロイドによるULV処理では,追い出し効果(フラッシング効果)も期待できる.
3)毒餌(ベイト剤)処理
(1)喫食率を高めるため,ゴキブリの餌となるものを設置場所周辺から除去することが大切である.ローチスポットが多く見られるゴキブリの活動場所に,的確に数ヵ所設置する.
(2)ホウ酸やヒドラメチルノン,フィプロニル,インドキサカルブ,ジノテフランなどを有効成分とした製剤がある.
(3)使用法は簡便であるが,遅効性のため生息密度が減少するまでにある程度長期的に配置する必要がある.飲食店などでの使用には適さない.
(4)毒餌には殺虫剤がかからないようにする注意が必要である.
3.粘着トラップ
生息密度がそれほど高くない場合に用いる.出来るだけ多く設置し,ゴキブリが慣れるまで設置場所を固定する.薬剤処理と併用すると効果が高い.
4.防除作業後には,無駄な薬剤散布を避け,今後の防除計画策定のために効果判定調査を行うことが重要である.