2023年

問題24体温の調節における熱産生と熱放散に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)基礎代謝とは,睡眠時のエネルギー代謝のことをいう.

(2)高温環境では発汗や血流量が増加し,代謝量は上昇する.

(3)熱産生量は人体の活動状況によって異なり,作業量が増せば増加する.

(4)日本人の基礎代謝は夏の方が冬よりも低い.

(5)低温の環境では震えによって熱産生量が増加する.

2023年

問題24正解(1)頻出度AAA

睡眠時代謝量は基礎代謝の95%程度とされる.

基礎代謝量とは,目覚めている状態で生命を維持する(心臓,呼吸,腎臓の働き,体温や筋緊張の維持など) ために必要な最小限のエネルギー消費量のことをいう.30歳男子の日本人で,1,450kcal/日,女子で1,167kcal/ 日程度である.
基礎代謝は早朝覚醒後の空腹時で仰臥位(あお向けの姿勢)におけるエネルギー代謝量に等しい.

-(2) 低温の環境では,人体からの熱放散量が増加するので体熱平衡を維持し,体温(深部体温)を37°前後に保つために熱産生量も増加するが,高温の環境でも,汗の分泌増加や血流量の増加で代謝量はわずかに上昇する.

-(3) 作業の体表面積あたりの平均代謝率は,例えば,のこぎりをひくは,230W/m2の高代謝率である.くぎ打ち,草むしりなどは,中程度代謝率に分類される.(2023-24-1表参照).

2023-24-1表各種作業の平均代謝率
区分 平均代謝率 作業例
1 安静 65W/m2 (安静)
2 低代謝率 100W/m2 楽な座位での軽い手作業(書く,タイピングなど)
普通の状態での車の運転
速さ3.5km/hの歩き
3 中程度代謝率 165W/m2 釘打ち
トラックのオフロード操縦
草むしり
3.5~5.5km/hの歩き
4 高代謝率 230W/m2 のこぎりを使う,シャベルを使う
草刈り
5.5~7km/hで歩く
5 極高代謝率 290W/m2 斧を振るう,激しくシャベルで掘る
階段を登る,走る,7km/hより速く歩く

-(4) 日本人の基礎代謝は冬の方が体温維持のため高く,夏は低い.変動幅は 10%程度である.

-(5) 震えによる熱産生量の増加は自律性体温調節反応である.体温調節機能は2023-24-2表のように自律性体温調節行動性体温調節に分類される.いずれの反応も,体温の変化を打ち消す方向に作用し,核心温を一定に保つ.

2023-24-2表自律性体温調節と行動性体温調節
自律性体温調節 蒸発調節域(高温域) 発汗反応
血管調節域(中温域) 暑さ 皮膚血管拡張
寒さ 皮膚血管収縮
身体冷却域(低温域) 産熱の増進
基礎代謝
ふるえ,筋緊張
食餌性熱産生
行動性体温調節 日射を受ける,避ける,衣服を着る,脱ぐ,空調設備を使用する,冷たい飲食物を摂る,温かい飲食物を摂る等

自律性体温調節は,人間が意識することなく発現する自律神経やホルモンによる不随意性生理調節機能である.