2023年

問題38・磁場・電磁波に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)電磁波は真空中も空気中も光速で伝わる.

(2)高エネルギーであるX線,γ線は電離作用をもつ.

(3)電場と磁場の振動が伝する波動の総称を電磁波という.

(4)光を波長の長さ順に並べると,紫外線が一番長く,その次が可視光線で,赤外線が一番短い.

(5)静電場は,電撃や皮膚がチリチリする不快感をもたらすことがある.

2023年

問題38正解(4)頻出度AAA

波長は赤外線が一番長く,可視光,紫外線の順である.周波数は,紫外線が一番大きく,可視光,赤外線の順である.電磁波の周波数×波長=光速となって一定となる.

波動現象については皆同じであるが,「速度(波の移動速度)=波長×周波数」である(2023-38-1表参照).

2023-38-1表波の周波数・周期・波長・速度
周波数 1秒間当たりの振動数 Hz(ヘルツ)
周期 1回振動するのに要する時間.周波数の逆数 秒(s)
波長 1回振動する間に進む距離 m
波の速度 周波数×波長 m/s

電磁波は波長の長短(周波数の高低)によってその性質が著しく変化するので,その利用の仕方も異なってくる(2023-38-2表参照).

2023-38-2表電磁波一覧
電磁波 電磁波の種類・名称 周波数 波長 用途・発生源
電離放射線 ガンマ(γ)線 3,000万THz~ 0.0001nm~ 科学観測機器
エックス(X)線 30,000~3,000万THz 0.001~10nm 医療機器(X線,CTスキャナ)
非電離放射線 紫外線 789~ 30,000THz 10nm~ 0.38μm 殺菌・レーザ
可視光 384~789THz 0.38~0.78μm 光学機器
赤外線 3,000G~ 384THz 0.78μm~ 0.1mm 工業用(加熱・乾燥)
電波 サブミリ波 300~ 3,000GH 0.1~1mm 光通信システム
ミリ波(EHF) 30~300GHz 1mm~1cm レーダ
センチ波(SHF) 3~30GHz 1~10cm 衛星放送, マイクロウェーブ
極超短波(UHF) 300~ 3,000MHz 10cm~1m テレビ,電子レンジ, 携帯電話
超短波(VHF) 30~300MHz 1~10m テレビ,FM放送, 業務無線
短波(HF) 3~30MHz 10~100m 短波放送,国際放送,アマチュア無線
中波(MF) 300~3,000kHz 100~1,000m ラジオ放送
長波(LF) 30~300kHz 1~10km 日本標準時送信
超長波(VLF) 3~30kHz 10~100km 電磁調理器
(ULF) 300~3,000Hz 100~103km
極超長波(ELF) 3~300Hz 103~105km 家電製品 高圧送電線

ミリ波~極超短波を通称マイクロ波,ミリ波~超長波をラジオ周波という.

-(1) 光速は,真空中より空気中の方がほんのわずかに遅い(通過する物質の密度が高いほど遅くなる.速度が遅くなる度合いをその物質の屈折率という).

-(2) 電離作用とは,エネルギーの大きい電磁波(電磁波の持つエネルギーは周波数に比例する)が,原子から電子を弾き飛ばしてイオン化する作用である.

-(3) 時間的に変動のない電場磁場(それぞれ静電場,静磁場という)はお互いに独立して存在する一方,時間的に変動する磁場は電場を生み,時間的に変動する電場は磁場を生む.この時間的な電磁場の変化(振動)が空間を伝搬する現象を電磁波と呼ぶ.交流 50Hz の商用電源・電線からは 50Hz の電磁波が生じている.

-(5) 火花放電の起きる電圧は間隔1mmあたり約3kVで,冬場,人体に発生する静電気の電圧は3kV~4kV程度である.