2023年

問題40電離放射線に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)感受性が最も高い細胞は, 消化管の上皮細胞である.

(2)アルファ線は紙一枚で遮断できる.

(3)人体に与える影響の単位はシーベルト (Sv) である.

(4)放射線による悪性腫瘍の発生は,確率的影響に分類される.

(5)妊娠可能な婦人の骨盤照射は, 月経開始後10日以内に行う.

2023年

問題40正解(1)頻出度AAA

人体細胞で電離放射線に最も感受性が高い(影響を受けやすい)のはリンパ球で,最も低いのは神経細胞である.上皮細胞も比較的感受性は高い.
※ リンパ球は,免疫を担当する白血球の一種.

-(2) 電離放射線とは,その強いエネルギーで,照射された物質原子から電子を弾き飛ばしてイオン化する作用をもった放射線で,2023-40-1表のようなものがある.

2023-40-1表電離放射線
種類 実体 防御
α(アルファ)線 ヘリウム原子核の流れ 紙で遮へい可能
β(ベータ)線 電子の流れ アルミニウムなどの薄い金属板で遮へい可能
γ(ガンマ)線
X線
高エネルギーの電磁波 鉛,厚い鉄板が必要
中性子線 中性子の流れ 水槽や厚いコンクリート壁が必要

-(3) 電離放射線の強さ,量等を表す単位は2023-40-2表参照.

2023-40-2表放射線の単位
単位 単位記号 意味
ベクレル Bq 放射能の強さ(原子核の崩壊数/秒)
放射性物質の濃度:Bq/kg,Bq/m3,Bq/m2など
シーベルト Sv 放射線の人体に与える影響の単位.吸収線量に人体の臓器ごとの放射線荷重係数を掛け合わせて求める.等価線量といわれる.
集団検診の胸部X線は1回あたり0.05mSv,自然放射線(世界平均)は2.4mSv/年・人である.

-(4) 放射線による障害2023-40-3表参照).

2023-40-3表放射線による障害
放射線の影響 身体的影響 早期影響 皮膚紅斑,皮膚潰瘍,白血球減少,脱毛,不妊等 確定的影響
晩発影響 白内障,胎児の障害
悪性腫瘍(白血病,悪性リンパ腫,皮膚がん,甲状腺癌等),寿命短縮 確率的影響
遺伝的影響 遺伝子・染色体異常,胎児奇形

人が,あるいき値を超えた量の放射線を被ばくすると特定の影響が出現する.この閾値がある放射線影響のことを確定的影響という.

確率的影響では,閾値がなく,どんなに少ない線量でも影響が発生する確率が存在し,被曝線量に比例して障害の発生率は高くなる.

-(5) 胎児の放射線被曝は,高感受性のため流産や各種の奇形の原因となるなど深刻な影響を引き起こす可能性がある.治療や検査のための妊娠可能な婦人への骨盤照射(腹部照射)は, 受胎のおそれのない月経開始後10日以内に行なう10日規則が国際的に提唱されている.