2023年

問題49熱移動に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)一般に,同一材料でも内部に水分を多く含むほど,熱伝導率は大きくなる.

(2)固体内を流れる熱流は,局所的な温度勾配に熱伝導抵抗を乗じて求められる.

(3)一般に,密度が大きい材料ほど,熱伝導率は大きくなる.

(4)中空層の熱抵抗は,一定の厚さ (2〜5cm)までは厚さが増すにつれて増大するが,それ以上ではほぼ一定となる.

(5)ガラス繊維などの断熱材の熱伝導率が小さいのは,繊維材によって内部の空気の流動が阻害されるためである.

2023年

問題49正解(2)頻出度AAA

熱伝導抵抗」→「熱伝導率」が正しい.

固体内は伝導によって熱は伝わり,固体内を流れる熱流数式[W/m2]は,次式の通り局所的な温度勾配数式[℃/m]に熱伝導率数式[W/(m・K)]を乗じて求められる.負号(-)は,温度が低下する向きに熱が流れることを示している.

数式

個体(厚さ数式[m])が均質で定常状態のとき,個体内部の温度勾配は直線となり,その場合の熱流数式は次式で表される.

数式

温度勾配は,熱伝導率が小さい,断熱材のような個体では大きくなる(2023-49-1図参照).

2023-49-1図熱伝導率と温度勾配
熱伝導率と温度勾配

熱伝導抵抗[m2・K/W]は,熱伝導のしにくさを表す熱伝導比抵抗(熱伝導率の逆数)に物体の厚さを乗じた数値で,建材や壁全体の熱抵抗値を示す.

-(1) -(3) 熱とはつまるところ,物質を構成する原子・分子さらには電子の振動に還元されるので,それらが多い,別の言葉で言えば原子・分子間の距離が近い,すなわち密度の高い物質ほど熱を伝えやすく,同じ理由で水分を多く含むほど熱伝導率は大きくなる.
金属にあっては,密度よりも金属内を自由に動き回る電子(自由電子)の数が熱伝導率に大きく寄与するので,電気伝導率の大きい(=電気抵抗の小さい)金属は熱伝導率も大きい.
物質の温度が高くなると原子・分子・電子の振動の振幅が大きくなる.一般の物質では熱伝導率は大きくなるが,金属では原子核の振動が自由電子の動きを邪魔するようになって熱伝導率,電気伝導率とも小さくなる.

-(4) 二重ガラスや壁内の空気層などの中空層の熱抵抗数式[m2・K/W]は,熱の伝導・放射・対流が絡んで,中空層の厚さ,密閉度,熱流の方向の影響を受ける.一定の厚さまで熱抵抗は増加するがそれ以上ではほぼ一定となる.住宅建築の業界団体では,空気層の熱流方向の厚さ数式が1cm未満の場合は数式=0.09×数式数式が1cm以上の場合は一定値数式=0.09を用いて計算するとしている.

-(5) 気体,液体の流体中は,熱は主に対流で伝わる.断熱材などの内部では流体の動きが阻害され対流が起きにくい.ちなみに静止した空気そのものの熱伝導率は 0.022W/m・Kと非常に小さい(2023-49-1表参照).

2023-49-1表建材などの熱伝導率
材料 熱伝導率[W/(m・K)] 密度[kg/m3」]
鋼材 45 7,860
アルミニウム 210 2,700
板ガラス 0.78 2,540
タイル 1.3 2,400
コンクリート 1.3 2,400
石こう板 0.14 710~1,110
パーティクルボード 0.15 400~700
木材 0.15 550
硬質ウレタンフォーム 0.027 25~50
ガラス繊維 0.04~0.05 20~50
空気 0.022 1.3
0.6 1