2023年
問題50熱放射に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.
(1)同一の物体間での放射に関し,物体の放射率と吸収率は等しい.
(2)物体表面の太陽放射の吸収率( 日射吸収率)は,必ずしも放射率と等しくならない.
(3)簡略化した放射熱伝達式では,放射熱伝達率が用いられる.
(4)常温物体から射出される電磁波は,波長が10μm付近の赤外線が主体である.
(5)温度が0℃の固体表面は,放射率に関わらず熱放射していない.
2023年
問題50正解(5)頻出度AAA
固体表面からの熱の放射は,固体表面の絶対温度の4乗に比例する.
絶対温度[K]の物体表面から射出される単位面積当たりの放射熱流
[W/m2]は次式の通り
の4乗に比例する(シュテファン・ボルツマンの法則).
(シグマ)はシュテファン・ボルツマン定数という定数である.
(イプシロン)は放射率と呼ばれ物体表面の特性値であり,完全黒体という理想的な仮想物体で1.0,通常の物体では0.1~0.9の値をとる.
すべての物体はその表面温度と表面特性に応じた大きさと波長の電磁波を射出すると同時に他の物体からの電磁波を吸収している.物体の表面間を電磁波によって伝わる熱の移動を「放射」という.
常温物体からの放射は波長が10μm付近の赤外線が主体であり,長波長放射と呼ばれる.長波長放射・吸収では,放射エネルギーに関するキルヒホッフの法則により,同一温度の物体間では放射率と吸収率は等しくなるが,可視光の占める割合が多い太陽放射の吸収率は,吸収する物体表面の色が関係してくる.白っぽい物体は日射を反射してしまうからである(2023-50-1表参照).
建材の例 | 長波長放射率 | 日射吸収率 |
白色プラスター | 0.9 | 0.1 |
白色ペイント | 0.9 | 0.2 |
アスファルト | 0.9 | 0.9 |
黒色ペイント | 0.9 | 0.9 |
光ったアルミ箔 | 0.1未満 | 0.1 |
新しい亜鉛鉄板 | 0.2 | 0.7 |
酸化した亜鉛鉄板 | 0.3 | 0.8 |
松板 | 0.6 | 0.9 |
-(3) 壁表面とそれに接する空気間の放射による伝達熱流量 [W/m2]は壁と空気の温度差に比例し,その比例係数を放射熱伝達率という.すなわち,熱伝達式は次式のとおり.
ただし,:放射熱伝達率[W/(m2・K)],
:壁表面温度[℃],
:空気温度[℃].
この式の放射熱伝達率 は,シュテファン・ボルツマンの法則による計算結果を近似・簡略化して得る.
室内の放射率が0.9程度で,常温とすれば=4.5W/(m2・K)程度となる.