2023年

問題58浮遊粒子の動力学的性質に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)抵抗係数は,ストークス域ではレイノルズ数に反比例する.

(2)電荷をもつ粒子の電気移動度は,粒子の移動速度と電界強度の積である.

(3)球形粒子の拡散係数は,粒径に反比例する.

(4)沈着速度は,単位時間当たりの沈着量を気中濃度で除した値である.

(5)球形粒子の重力による終末沈降速度は,粒径の二乗に比例する.

2023年

問題58正解(2)頻出度AAA

電気移動度は,粒子の移動速度を電界強度で除したもので,電界中の粒子の移動しやすさを表す.

-(1) 球形粒子が気体から受ける流体抵抗力数式[N]は次式で表される.

数式

ただし,数式:抵抗係数,数式:粒子の投影面積[m2],数式:流体密度[kg/m3],数式:粒子の流体に対する相対速度[m/s].

抵抗係数数式は,数式数によって2023-58-1表のような値を取る.

2023-58-1表抵抗係数数式数式
数式数の大きさ 抵抗係数数式の値
数式数<2(ストークス域,層流域ともいう) 数式数に反比例
数式数<500(アレン域,遷移域ともいう) 数式数の平方根に反比例
数式数>500(ニュートン域,乱流域ともいう) 数式=0.44(固定数値でよい)

レイノルズ数(数式数)は,流体の中で働く慣性力と粘性力の比(慣性力/粘性力)を表す無次元数である.浮遊粒子が気体から流体抵抗力を受ける際の数式数は次式で表される.

数式

ただし,数式:気体の粘度[Pa・s],数式(ニュー):気体の動粘度(数式)[m2/s].

-(3) -(5) 浮遊粒子は,様々な力が作用して,空気中を運動する.浮遊粒子の運動と粒径の関係等を2023-58-2表にまとめた.

2023-58-2表浮遊粒子の運動
粒子が気体から受ける流体抵抗力 流体抵抗力はレイノルズ数(数式数)によっても異なる.
-(1)の式を参照.
粒子の投影面積,流体密度に比例,相対速度の2乗に比例
重力による
終末沈降速度
球形粒子に流体抵抗力と重力が作用する場合,定常状態では,最終的に一定速度で沈降するようになる.この速度を終末沈降速度という. 粒径の2乗に比例
静電界中の移動速度

電気移動度
水平方向に電界がかけられた空間で,球形粒子が電荷を持っていると,水平方向にクーロン力が働き移動する.定常状態ではクーロン力と流体抵抗とが釣り合い,一定の移動速度となる.
移動速度を電界強度で除したものを電気移動度といい,電界中の粒子の移動しやすさを表す.
粒径に反比例
拡散係数 空気分子のブラウン運動により,粒子は拡散に関するフィックの法則に従い流体中に拡散していく.フィックの法則に用いられる粒子の拡散係数は粒径に反比例し,結果として,拡散の速度は粒径に反比例する.すなわち,小さな粒子はブラウン運動による移動量が大きく,よく拡散する. 粒径に反比例
ブラウン運動による移動量 粒径が小さいほど大きくなる.
流れに平行な平面への沈着速度> 浮遊粒子の単位時間当たりの,壁などへの沈着量を気中濃度で除した値を沈着速度という.
拡散により小粒径の粒子の沈着速度が大きい.
粒径が小さいほど沈着速度は大きくなる.
流れに垂直な平面への沈着速度 流れに垂直な面は,重力と慣性力により大粒径の粒子,拡散により小粒径の粒子の沈着速度が大きい. どちらともいえない.