2023年
問題63空気調和における湿り空気線図上での操作に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.
(1)温水コイル通過後の空気は単純加熱となり,通過前後で絶対湿度は変化しない.
(2)冷房時の室内熱負荷における顕熱比 (SHF) が0.8の場合,空調機からの吹出し空気の絶対湿度は室内空気より低くなる.
(3)暖房時に水噴霧加湿を用いる場合,給気温度は加湿前の温水コイルの出口温度と等しくなる.
(4)還気と外気の混合状態は,湿り空気線図上において還気と外気の状態点を結んだ直線上に求められる.
(5)冷水コイルによる冷却除湿では,バイパス空気によりコイル出口における空気の相対湿度は100%とならない.
2023年
問題63正解(3)頻出度AAA
加湿時の状態点の移動(2023-63-1図)を見ると,水噴霧加湿(水加湿)では乾球温度は水の蒸発潜熱によって降下することがわかる.それを見込んで温水コイル出口の温度は設計給気温度より高くする必要がある.
加湿をしたときの状態点の移動方向(勾配)は熱水分比[kJ/kg]で決まる(湿り空気線図の左上の半円形の熱水分比スケールで勾配を求めることができる).
ただし,:熱量の変化[kJ],
:絶対湿度量の変化[kg],
:加湿に用いた水,水蒸気の比エンタルピー[kJ/kg(DA)](つまり,加湿に使用した水分の比エンタルピーで決まる).
上図で,①は水加湿を示している.常温の水の比エンタルピー約42kJ/kgはとみなしてよいので,ほぼ比エンタルピー一定の線に沿って状態点は移動する(その時温度は低下することが分かる).③は蒸気加湿を示す.100℃の蒸気の比エンタルピーは約2,600kJ/kgなので,状態点はほぼ垂直(わずかに右傾斜)に上に移動する(温度はわずかに上昇する).②は温水加湿を示し,パン型加湿器のように電熱器を空調機内にもつ加湿器では空気温度はさらに上昇する(④,垂直より右に傾く).
水噴霧加湿(水加湿)では,上記のように乾球温度は水の蒸発潜熱によって降下するので,空気線図を使って温水コイル出口の温度を上げて,必要な吹出し温度が得られるように調整する.
-(1) 顕熱の移動しか起こらない温水コイルでは,潜熱の変化を伴わない単純加熱となる.すなわち顕熱比=1で状態点は水平に左に移動する.その時切っていく相対湿度線はどんどん小さい値になっていく(2023-63-2図参照).すなわち単純加熱では相対湿度は低下することが分かる.
-(2) 〜吹出し口から吹き出された空調空気の状態点は,その室の顕熱比の勾配に沿って移動する(2023-63-3図参照).
顕熱比は,定義(顕熱比=顕熱/(顕熱+潜熱))から最大1.0で水平(=絶対湿度一定)であり,それ未満では,右肩上がりである.したがって吹出し空気の状態点が右に向かって移動する冷房時には,吹出し空気の絶対湿度≦室内空気の絶対湿度となる(吹出し空気の状態点は左に向かって移動する暖房時は,吹出し空気の絶対湿度≧室内空気の絶対湿度となる).
-(4) A,B 二つの状態点の空気(今回は還気と外気)の混合では,混合の結果の状態点CはABを結んだ線分をA,Bの空気の量の逆比に内分する(2023-63-4図参照).
-(5) 空気の一部は冷水コイルに触れることなく通り過ぎる(バイパスファクタという)ために,コイルを通過する全空気が,相対湿度が100%となる装置露点温度まで冷却されることはない(2023-63-5図参照).