2023年
問題64同出力の蒸気圧縮冷凍機と比較した場合の吸収式冷凍機の特徴に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.
(1)冷凍機内は真空であり,圧力による破裂のおそれがない.
(2)回転部分が少なく,騒音・振動が小さい.
(3)特別な運転資格を必要としない.
(4)消費電力量が少ない.
(5)排熱回収に適さない.
2023年
問題64正解(5)頻出度AAA
吸収冷凍機(吸収式冷凍機)は,吸収液の再生に使う熱源の適用範囲が広く,排熱回収に適する.
吸収冷凍サイクルでは,次のように冷媒と吸収液がほぼ真空状態の密閉容器内を循環している(2023-64-1図,2023-64-1表参照.
冷媒 | 水 |
吸収液 | 臭化リチウム(リチウムブロマイド)溶液.臭化リチウムは塩化ナトリウムと似た性質(潮解性)をもち,水をよく吸収する. |
蒸発器 | 冷媒である水を冷水チューブにスプレーし,水の蒸発熱で冷水を冷やす. 水が5℃程度で盛んに蒸発するように蒸発器の内部は高真空に保たれている. |
吸収器 | 吸収液を散布し蒸発した水冷媒を吸収する.発生する吸収熱を外部冷却水で除去. |
再生器 | 冷媒(水)蒸気を吸って薄くなった吸収液を外部の熱によって加熱し,冷媒を蒸発させ吸収液を再生する.外部の熱はボイラ蒸気や各種の排熱が利用できる. |
凝縮器 | 再生器からの冷媒蒸気を外部冷却水で凝縮させ水冷媒に戻す. |
主流の二重効用吸収冷凍機(2023-64-2図)では高温,低温の再生器と熱交換器を持ち,外部から取り入れた蒸気のエネルギーを二段階で利用して熱効率を上げている.
出典Panasonic
https://panasonic.biz/appliance/air/nc/standard/lineup/img/steam_f/01.jpg
吸収冷凍機の熱源は都市ガスを熱源とするボイラーの蒸気だけに限らない.LPガス,石油,各種排ガスや高温水,低温水も熱源になる.
吸収冷温水発生機は自ら炉を持ち,石油や都市ガスを再生器の熱源とする.1台の機器で冷水,温水,又は冷温水の同時取出しを行うものがある.冷暖房兼用機のため機器設置スペースが節約できる.小容量のものでは屋外設置型があり機械室が不要になる.
蒸発温度(冷水出口温度)を上げ,凝縮温度(冷却水入口温度)を下げると成績係数が良くなるのは,蒸気圧縮式冷凍サイクルと同じである.
吸収冷凍機の特徴
吸収冷凍機,吸収冷温水発生機は,蒸気圧縮式冷凍機と比べ,以下のような特徴がある.
1.使用する電力量が少ない.
2.真空で運転され,高圧ガス保安法の適用を受けない(運転に特別な資格不要).
3.再生器の熱源の適用範囲が広く,排熱回収に適する.
4.負荷変動に対し,容量制御性はよいが,起動の度に停止時薄められた吸収液から冷媒(水)をつくるためのウォームアップ時間を要するので,オン-オフ運転制御は省エネとならない.可能であれば台数分割し軽負荷時には一部の冷凍機を停止する.
5.振動や騒音が少ない.
6.蒸発圧縮冷凍機と比べ成績係数が低く,同じ冷凍能力なら排熱量が多くなって,冷却塔が大型となる(成績係数=出力/入力なので,成績係数が小さいということは,出力が同じなら入力が大きいことを示す.したがって排熱量=出力+入力なので排熱量が大きくなる).