2023年

問題67熱源方式に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)地域冷暖房システムは,地域内の建築物や施設(需要家)同士が相互に熱を通し,効率的に熱需要に対応する方式である.

(2)ヒートポンプ方式は,1台の機器で冷水又は温水,あるいは必要に応じて冷水と温水を同時に製造するものがある.

(3)吸収冷凍機+蒸気ボイラ方式は,空調以外の給湯・洗浄・消毒等の用途に高圧蒸気を必要とする病院,ホテル,工場等での採用例が多い.

(4)コージェネレーション方式は,エンジンなどを駆動して発電するとともに,排熱を回収して利用する方式である.

(5)蓄熱システムは,熱源設備により製造された冷熱・温熱を計画的に効率よく蓄熱し,必要な時に必要な量だけ取り出して利用するシステムである.

2023年

問題67正解(1)頻出度AAA

地域冷暖房システム(DHC:District heating and cooling)とは,熱源プラントにて集中的に製造した熱媒を,一定地域内の多数の建築物や施設に供給し,冷暖房するシステムをいう.その特徴は次のとおり.

1.熱源プラントから熱媒体を需要家に供給するための地域配管が必要となり,そのためのスペースとコストがかかる.
2.大気汚染防止等の公害防止対策が徹底され,個別熱源に比べ,熱源を集中することから高効率の大型機器の使用が可能となり,環境負荷の低減となる.
3.ゴミ焼却廃熱や未利用エネルギーの活用がしやすく省エネルギーが図れる.
4.需要家各建物の最大負荷は同時刻に発生することはないので,熱源プラントの設備容量は,各建物の最大負荷の合計より小さくすることが可能である.
5.需要家の建築物では機械室スペースを大幅に削減可能で,有効用途面積が拡大し,運転資格者を含めた熱源の管理要員の削減が可能となり収益性が増大する.
6.熱源の集中は防災管理が行き届き都市の防災上好ましい.
7.冷却塔や煙突が散在することが減り,都市の美観の向上に寄与する.
8.設備の能力が 21GJ/h 以上で不特定多数の需要家に熱供給する能力を持つ施設は,熱供給事業法の適用を受ける熱供給事業として経済産業大臣の登録を受けなければならない.

現在全国で約80の登録事業者が熱供給事業を行っている(資源エネルギー庁・登録熱供給事業者一覧).

代表的な熱源方式2023-67-1表にまとめた.

2023-67-1表熱源方式
熱源方式 特徴・備考
電動冷凍機+ボイラ方式 年間を通して電力消費量の変化が大きくなる(電力消費が夏期大きく,冬期小さい).
電動機駆動ヒートポンプ方式 夏期と冬期における電力使用量の変化が小さい.
採熱源として空気熱源と水熱源(河川,地下水等)があるが,立地など制約の少ない空気熱源が主流である.
ガスエンジンヒートポンプ方式 エンジンの排熱を回収して有効利用することができるので寒冷地の暖房熱源に適している.
吸収冷凍機+蒸気ボイラ方式 空調以外の給湯・洗浄・消毒等の用途に高圧蒸気を必要とする病院,ホテル,工場等での採用例が多い.
直焚じかだき吸収冷温水器 1台の機器で冷水又は温水,あるいはこれらを同時に製造することができる.
コージェネレーション方式 エンジンなどを駆動して発電するとともに,排熱を回収して利用する.
電力需要を主として運転するコージェネレーション方式では,空気調和その他の熱需要に追従できない場合がある.
蓄熱システム 熱源設備により製造された冷熱・温熱を計画的に効率よく蓄熱し,必要な時に必要な量だけ取り出して利用する.
熱源装置容量の削減や冷暖房最盛期における電力負荷平準化に寄与する.
地域冷暖房システム(DHC) 個別熱源システムに比べて,一般に環境負荷は低減できる.
設備の能力が21GJ/h以上で不特定多数の需要家に熱供給する能力を持つ施設は,熱供給事業法の適用を受け,熱供給事業として経済産業大臣の登録を受けなければならない.