2023年

問題68全熱交換器に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)外気負荷の軽減を目的として,空気中の顕熱・潜熱を同時に熱交換する装置である.

(2)回転型は,ロータの回転に伴って排気の一部が給気側に移行することがある.

(3)静止型は,回転型よりも目詰まりを起こしにくい.

(4)静止型の給排気を隔てる仕切り板は,伝熱性と透湿性をもつ材料で構成されている.

(5)冬期・夏期のいずれも省エネルギー効果が期待できるが,中間期の運転には注意が必要である.

2023年

問題68正解(3)頻出度AAA

一般的に静止型の方が,接続するファンの静圧が小さく,フィルタが粗じん用にとどまるため本体の目詰まりが生じやすいと考えられる.

回転型全熱交換器静止型全熱交換器2023-68-1図に示す.

2023-68-1図静止型全熱交換器と回転型全熱交換器

出典社団法人日本冷凍空調工業会
https://www.jraia.or.jp/product/file/e-book_zennetsu_CO2.pdf を基に作成

静止型全熱交換器は仕切り板によって熱交換する.回転型全熱交換器はロータのエレメントにより熱交換する.

全熱交換器の全熱とは顕熱+潜熱を意味する.室内からの排気と導入外気との間で熱交換し,排気の顕熱,潜熱の回収を図る,空気対空気の熱交換器で省エネ機器である.エネルギー回収率は 60%程度のものが多く,これだけでは不十分なため,二次空調機に接続して使用する.

室内汚染物質が取り入れた外気側に漏えいしない構造,保守管理が必要とされる.

排気の顕熱,潜熱を一時的に蓄える素材は難燃紙にシリカゲルを含浸させたものや浸透性をもった加工紙などが使われているが,いずれにしても表面が油膜に覆われてはその機能を失ってしまうので,ちゅう房の排気などを通すのは不適当である.

寒冷地方における空調用換気からの排熱回収や,排気中に水分やミスト・ダストを多く含む工場排気,水分の回収を必要としないちゅう房や温水プールにおける熱回収には「顕熱交換器」が使用される.
顕熱交換器は全熱交換器と異なり,潜熱(湿分)の移行は伴わないため両流体の隔壁に透湿性材料,又は金属エレメントへの吸湿材などのコーティングは必要としないが,顕熱交換器では冬場に排気が,夏場に取入れ外気が低温多湿となって内部に結露しやすくなる(全熱交換器では湿気も移動するので,湿度が高く温度が低い空気は発生しにくい).