2023年

問題71空気調和設備に用いられる加湿装置と除湿装置に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)冷却除湿機は,空気を冷却して露点温度以下にし,水蒸気を凝縮分離する方式である.

(2)吸収式除湿機は,塩化リチウムなどの吸収剤を利用した湿式の除湿装置である.

(3)蒸気式加湿器では,水中に含まれる微生物の放出により空気質が悪化することがある.

(4)吸着式除湿機は,シリカゲルなどの固体吸着剤に水蒸気を吸着させて除湿する装置である.

(5)気化式加湿器では,温度降下が生じる.

2023年

問題71正解(3)頻出度AAA

蒸気式加湿器の加湿蒸気は高温のため無菌である(2023-71-1表参照).

どれがどの方式に分類されるか,どれが温度降下するか,どれが不純物を放出するか,無菌なのはどれか,が出題される.

2023-71-1表加湿装置
方式 特徴 加湿装置の種類と原理 課題
気化方式

1)温度降下する

2)給水中の不鈍物を放出しない

3)飽和湿度以下で放出する(結露しにくい)

4)低温高湿になるほど加湿量が少なくなる

滴下式 上部より滴下給水し加湿材を湿らして通風気化させる 加湿エレメントの寿命
5,000~10,000h
透湿模式 透湿膜内に水を充填させ膜の外側で通風・気化させる 透湿膜の寿命
3,000~7,000h
エアワッシャ式 多量の水を循環し空気と接触して気化させる 多量の水と循環ポンプが必要
蒸気方式

1)無菌

2)給水中の不純物を放出しない

3)温度降下しない

電熱式 シーズヒータにより水を加熱蒸発させる シーズヒータの寿命
10,000~20,000h
電極式 電極間の水をジユール熱で加熱蒸発させる 純水では運転できない
電極の寿命2,000~5,000h
パン型 シーズヒータにより水を加熱蒸発させる 水槽内の頻繁なスケール除去作業が必要
一次蒸気スプレー式 ホイラからの蒸気を直接放出する 蒸気配管・ドレン配管必要
ボイラ清缶剤の使用に注意
二次蒸気スプレー式 ボイラ蒸気を熱源として間接的に水を加熱蒸発させる 蒸気配管・ドレン配管必要
水噴霧方式

1)温度降下する

2)給水中の不純物を放出する

遠心式 遠心力により水を霧化する 軸受けの寿命
2,000~30,000h
超音波式 超音波振動子により水を霧化する 振動子の寿命
5,000~10,000h
二流体スプレー式 高速空気流により水を霧化する 圧縮機が必要
高圧水スプレー 高圧水をノズルで霧化する 加圧ポンプが必要

水噴霧方式は加湿吸収距離が大きいため加湿効率は一般的に低い(蒸気吹出方式,気化方式の加湿効率はほぼ100%).

近年の東京都などの調査によれば,通風気化方式の加湿器の採用が90%を超えている.

-(1) -(2) -(4) 空調の吸湿には,冷却除湿デシカント除湿吸収除湿吸着除湿)がある.この違いを湿り空気線図に示す(2023-71-1図).

2023-71-1図冷却除湿とデシカント除湿
冷却除湿とデシカント除湿

Ⓐは一般的な空調機内での冷却除湿を表している.

Ⓑ,Ⓒはデシカント(乾燥剤)による除湿で,Ⓑは液体吸収剤による吸収除湿,Ⓒは個体吸着剤による吸着除湿である.同じ除湿量なら,個体吸着剤の吸着熱の方が液体吸収剤の吸収熱より大きい.したがって,固体吸着の方が温度上昇が大きくなる.これは,液体吸収剤での発熱は水の凝縮熱なので,水加湿の逆の過程で,湿球温度は一定となるが,個体吸着剤では,固体表面と水蒸気分子間の相互作用によって分子間力が開放されて発生する熱が加わるため,その分温度上昇が大きくなる(「ヒートテック」の原理である).

この図でよくわかるのは,同じ除湿量を得るのに,冷却除湿はデシカント除湿と比べて,目立って大きなエネルギー(比エンタルピー)を必要とすることである.省エネの観点から現在種々のデシカント空調のシステム・機器の開発が進められている.

「吸着剤」には水蒸気を捉える微細な多孔質をもつシリカゲルゼオライト,活性炭などが用いられる.
※ シリカゲル(silica gel):二酸化ケイ素を主原料とする.
※ ゼオライト(zeolite):沸石ふっせき ともいう.アルミとケイ素の化合物.天然に産出するが,類似物を含め大量に化学合成されている.

「吸収剤」には水分を吸収して溶ける性質(潮解ちょうかいという)を持つ塩化リチウム塩化カルシウムなどが用いられる.

いずれの装置も,空気から吸湿する部分と,吸着・吸収剤の再生をする部分からなり,連続運転を可能にしている.