2023年

問題77浮遊粉じんの測定法と測定器に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)浮遊粉じんの浮遊測定法には,吸光光度法がある.

(2)浮遊粉じんの捕集測定法には,フィルタ振動法がある.

(3)デジタル粉じん計は,粉じんによる散乱光の波長により相対濃度を測定する.

(4)建築物環境衛生管理基準に基づき,ローボリウムエアサンプラ法を用いる場合は,分粒装置を装着する必要がある.

(5)デジタル粉じん計は,経年による劣化などが生じることから定期的に校正を行う必要がある.

2023年

問題77正解(3)頻出度AAA

デジタル粉じん計は,粉じんによる散乱光の強さにより相対濃度を測定する.

浮遊粉じんの測定法は大別すると捕集測定法(空気中を浮遊している粉じんを捕集してその濃度を測定)と,浮遊測定法(粉じんを浮遊状態のままで測定)がある.

ビル管理法の測定対象となる浮遊粉じん濃度は,粉じんの化学的組成を考慮することなく,相対沈降径が10μm以下の粒子(セパレーター,分粒器などにより測定前に10μmを超える粒子を取り除く)を対象として質量濃度で規定されている(ビル管理法施行規則第3条の二).

1.捕集測定法(2023-77-1表)

捕集測定法では粉じんの形状は測定結果に影響を与えないが,空気の吸引量を知る必要がある.

2023-77-1表浮遊粉じんの捕集測定法
捕集方法 濃度測定法
ろ過法 ローポリウムエアサンプラ法,吸光光度法,β 線吸収法,フィルタ振動法,計数法
衝突法 秤量法,圧電天秤法,計数法
静電法 圧電天秤法,計数法

1)ローボリウムエアサンプラ法(LV法)
ビル管理法の標準測定法である.グラスファイバー(ガラス繊維)ろ紙を使用して,毎分 20~30L の空気を吸引ろ過してその重量増加から質量濃度を算出する.
[質量濃度]=[ろ紙の重量増加]/[吸引空気量]であるが,ろ紙自体の質量を考えると,天秤で精度よく計量するには,1mg以上の粒子を捕集する必要があり,一般的には4~8時間の採じん時間を必要とする(2023-77-1図参照).

2023-77-1図ローボリウムエアサンプラ法(LV法)
ローボリウムエアサンプラ法(LV法)

LV法は直接質量濃度が得られるが,取扱いが面倒なので,同法によって較正された各種の相対濃度粉じん計が開発されている.

相対濃度測定法の粉じん計による測定値を質量濃度に補正するにはあらかじめ定められた較正係数Kを乗じる.以下は全て相対濃度測定法である.

2)吸光光度法
ろ紙上に捕集された粉じんの,捕集前と捕集後の光の透過率の変化量から粉じん濃度を求める.吸光光度計を用いてOD値(光学密度)を求め,較正係数を乗じて質量濃度を求める.

3)圧電天秤法(ピエゾバランス粉じん計)
圧電素子(ピエゾ素子,水晶はその 1 つ)は電圧をかけると,固有の周波数で振動する.圧電素子上に静電沈着させた浮遊粉じんの質量により固有周波数が減少することを測定原理とする.粉じんが堆積して振動数の減少が2000Hzを超えると誤差が大きくなるので捕集面の洗浄が必要となる.

4)β(ベータ)線吸収法
β線を物質に照射した場合,その物質の質量に比例してβ線の吸収量が増加する原理を利用する測定方法.大気汚染常時監視の自動測定器に用いられている.

2.浮遊測定法(2023-77-2表)

浮遊測定法では,空気の吸引量を知る必要がない.

2023-77-2表浮遊測定法
散乱光法 デジタル粉じん計,粒子計数法
吸光度法 透過光量を吸光光度計で測定
その他 凝縮核計数法

1)デジタル粉じん計2023-77-2図

2023-77-2図デジタル光散乱型粉じん計
デジタル光散乱型粉じん計

出典柴田科学株式会社
https://www.sibata.co.jp/item/7470/

浮遊粉じんが光を散乱する強さは,粒径,形状,屈折,比重などがほぼ一定ならば,その質量濃度に比例する.吸引される試料空気が散乱光測定域を通る際に光を照射し,その中に含まれる粉じんから発した散乱光の強さを光電変化素子で電気信号に変換し,その積算値をデジタル式に表示することにより,相対濃度cpm:count per minute,1 分当たりのカウント数)として計測する.相当質量濃度は次の式から求める.

数式

ただし,数式:相当質量濃度[mg/m ,数式:較正係数(=1.3),0.001:1cpmたり0.3mmのステアリン酸粒子(標準粒子)の質量濃度[mg/m3],数式:1 分間の相対濃度計測値[cpm],数式:ダークカウント[cpm].
ダークカウント:光散乱式の粉じん計では,受光部の光電子倍増管などの性質から,無粉じんの空気であっても一定のカウントをする.これをダークカウント又はバックグラウンドという.
現在市販されているデジタル粉じん計は内部の演算回路によって始めから相当質量濃度を表示する.

2)吸光度法
透過光量を吸光光度計で測定する.得られたOD値に較正係数を乗じて質量濃度を求める.

3.較正係数数式
相対濃度測定法の測定値を質量濃度に補正するにはあらかじめ定められた較正係数数式を乗じる.
ピエゾバランス粉じん計の校正係数は 1.0(すなわち測定値が質量濃度に近い).デジタル粉じん計他多くの粉じん計は1.3である.

4.粉じん計の較正
粉じん計はそれぞれのメーカーにおいて,一定の感度に設定されている.しかし,時間の経過とともに粉じん計の指示に誤差を生じてくる.一般にこの誤差を是正し,本来もつべき感度に戻す操作を較正という.ビル管理法では粉じん計の較正を1年以内に1回,厚生労働大臣の登録を受けた者の較正を受けることと定めている(建築物環境衛生維持管理要領).