2023年
問題103法令で定められている建物の防火防災に関わる管理体制に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.
(1)複数の管理権原者からなる防火対象物においては,共同防火管理体制を構築する必要がある.
(2)一定の規模の建築物では,事業所単位や建築物単位で有資格の防火管理者を選任し,消防計画を作成する必要がある.
(3)指定数量以上の危険物がある防火対象物では,防火管理者として危険物取扱者を選任する必要がある.
(4)建築基準法令で定める特定建築物は,建築物調査・防火設備検査・建築設備検査の定期報告対象となる.
(5)大規模事業所においては,従来の防火管理者,自衛消防組織に加えて,大地震などに備えた防災管理者を置くことが必要である.
2023年
問題103正解(3)頻出度AAA
消防法ならびに火災予防条例で防火管理者を選任しなければならない防火対象物が定められているが,「危険物取扱者を防火管理者に選任しなければならない防火対象物」などという規定はない.
-(1) 共同防火管理体制が必要とされるのは,管理権原の分かれている防火対象物で以下のもの.
1.高さ31mを超える高層建築物
2.特定防火対象物(地上3階以上,かつ,収容人員が30人以上のもの.ただし,社会福祉施設などの用途を含む場合,収容人員が10人以上のもの.)
3.地下街(消防長又は消防署長が指定),準地下街
4.非特定防火対象物(複合用途)(事務所,共同住宅などが混在する複合用途防火対象物(2.を除く)で地上5階以上,かつ,収容人員が50人以上のもの.)
これらの防火対象物の管理権原を有するものは,政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者(以下この条において「統括防火管理者」という.)を協議して定め,政令で定めるところにより,当該防火対象物の全体についての消防計画の作成,当該消防計画に基づく消火,通報及び避難の訓練の実施,当該防火対象物の廊下,階段,避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない(消防法第8条の二).
-(4) 特定建築物※等の所有者または管理者は定期に,建築物の敷地,構造および建築設備等の状況を,法の定める資格者に調査・検査させて,その結果を特定行政庁に報告しなければならない(建築基準法第12条).
※ ビル管理法の「特定建築物」ではない(法律は「特定」,「特殊」が大好きで,その具体的に意味するところはその法律による.e-gov 法令検索で,「特定建築物」と検索すると,現在43件の法令がヒットする).
建築物・建築設備の定期報告制度の概要は次のとおり.
1)調査・検査の種類と報告対象建築物(国等が所有または管理する建築物を除く)2023-103-1表参照.
調査・検査名 | 報告対象建築物 |
特定建築物定期調査 | ・特殊建築物 ・階数5以上かつ延べ面積 1,000m2]超の事務所等 ・特定行政庁が指定する建築物 |
防火設備定期検査 | |
建築設備定期検査 | |
昇降機等定期検査 | 全ての建築物 |
2)検査対象事項・設備,頻度,検査資格者2023-103-2表参照.
調査・ 検査名 |
検査対象事項・設備 | 頻度 | 検査資格者 |
特定建築物 定期調査 |
建築物・敷地 | 1~3年 | 一・二級建築士
特定建築物調査員 |
防火設備 定期検査 |
防火設備(防火扉,防火シャッタ,耐火クロススクリーン,ドレンチャ)※ | 6か月 ~ 1年 |
一・二級建築士 防火設備検査員 |
建築設備 定期検査 |
建築設備(機械換気設備,排煙設備,非常用の照明装置および給排水設備) | 1年 | 一・二級建築士 建築設備検査員 |
昇降機等 定期検査 |
エレベーター, エスカレーター | 1年 | 一・二級建築士 昇降機検査員 |
※ 常時閉鎖式の防火設備,防火ダンパーを除く(これらは建築設備定期検査の対象) .
-(5) 防災管理者は,防火管理者とは別に,地震対策とテロ対策を行うために平成20年(2008年)の消防法の改正で導入された.防災管理者を選任しなければならない防火対象物は,例えば,地階を除く階数が11以上の防火対象物で、延べ面積が1万平方メートル以上のもの,等(消防法施行令第4条の二の四).