2023年
問題92建築物と都市環境に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.
(1)半密閉の空間のようになる,両側を高い建築物で連続的に囲まれた道路空間は,ストリートキャニオンと呼ばれる.
(2)熱容量が大きい材料は,日射熱を蓄熱しやすい.
(3)内水氾濫による都市型洪水は,環境基本法で定義される公害の一つである.
(4)都市化により,都市の中心部の気温が郊外と比較して高くなる現象をヒートアイランド現象という.
(5)乱開発などによって市街地が広がることをスプロール現象という.
2023年
問題92正解(3)頻出度AAA
内水氾濫とは大量の雨水が排水できず洪水になることである(対して,外水氾濫とは,大量の雨による河川の氾濫や堤防の決壊で,市街地に水が流れ込む現象).ゲリラ豪雨による洪水などは公害の要素を含んでいるようにも見れるが環境基本法の典型公害には今のところ含まれていない.
環境基本法で定義される公害(典型7公害と呼ばれる)は,2023-92-1表のとおり.
名称 | 「環境基準」※ |
大気の汚染 | あり |
水質の汚濁 | あり |
土壌の汚染 | あり |
騒音 | あり |
振動 | なし |
地盤の沈下 | なし |
悪臭 | なし |
典型7公害を定める環境基本法の条文は次のとおり.
『この法律において「公害」とは,環境の保全上の支障のうち,事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染,水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む.第二十一条第一項第一号において同じ.),土壌の汚染,騒音,振動,地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く.以下同じ.)及び悪臭によって,人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む.以下同じ.)に係る被害が生ずることをいう』(環境基本法第2条3).
-(1) 両側を高い建築物で連続的に囲まれた道路空間は,半密閉の空間のようになるため,ストリートキャニオン(キャニオン:渓谷)と呼ばれる.通風による放熱を妨げ,ヒートアイランド現象の原因となる.また,汚染物質も滞りやすい.
-(4) ヒートアイランド現象:等温線分布で,都心部の気温が郊外と比較して高く,島のように見えることからこの名がついた.都市ではエネルギー使用密度が高い上,コンクリートやアスファルトなど熱容量の大きい物質で地表が覆われ日射熱が蓄熱されやすいのが主な原因の1つである.
-(5) 土地価格の高騰などにより敷地が細分化し,乱開発などによって市街地が無秩序に広がることをスプロール(Sprawl:虫食い)現象という.インフラの立ち遅れや崖崩れなどの危険を伴うことが多い.