2023年

問題97建築物の電気設備に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.

(1)実効値100Vの交流電圧は,ピーク時の電圧が約140Vである.

(2)受変電設備の変圧器容量は,建築物内部の電気設備の負荷の合計値以上とするのが一般的である.

(3)電線の配電距離が長くなると,電圧の低下を招く.

(4)磁束密度は,電流の強さとコイルの巻き数との積に比例する.

(5)建築物の設備機械の動力は,三相誘導電動機を多く利用している.

2023年

問題97正解(2)頻出度AAA

-(2) 受変電設備の変圧器容量=建築物内部の電気設備の負荷の合計値(全負荷容量)とすると,過剰設備になってしまう.実際に同時発生する負荷容量と全負荷容量の比率を需要率という.受変電設備の変圧器容量=全負荷容量×需要率で検討する.需要率は施設の用途によってかなり異なる(40%~80%程度).

-(1) 正弦波交流電圧のピーク電圧は実効値の数式(≒1.41)倍になる.

-(3) 配電距離が長くなると導線の電気抵抗が増え電圧の低下を招く.「内線規程に,電圧降下の許容値が,電線のこう長が60m超~120m以下なら5%以下などと定められているので,電線の太さを変えて抵抗値を調整する.
※ 内線規程:電力会社が需要設備の審査・検査に用いる民間規定.法律に準ずるものとして扱われている.

-(4) コイルが理想的なソレノイドの場合は,ソレノイドの長さ1m当たりの巻き数を数式とすれば,ソレノイドの内部の磁束密度は,数式と表される.数式透磁率という定数である.2023-97-1図参照.

2023-97-1図ソレノイドの内部磁束
ソレノイドの内部磁束

-(5) 三相誘導電動機は丈夫で扱いやすいので,空調,給排水,エレベータ等の動力として建築物に広く導入されているが,その欠点の一つが始動電流が大きいことである.定格電流の何倍もの電流が流れ,電動機自体へのストレスになると同時に配線の電圧降下を引き起こして周囲の電気機器に悪影響を与える.

誘導電動機のスターデルタ(Y-Δ)起動では,デルタ接続の固定子巻線を始動時だけスター結線として,線間電圧を数式,始動電流を1/3に抑える始動法である(2023-97-2図参照).

回転が定格速度付近まで加速したらデルタ結線に切り替える.

2023-97-2図三相誘導電動機のスターデルタ起動
三相誘導電動機のスターデルタ起動