2023年
問題126排水の水質に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.
(1)全窒素は,アンモニア性窒素,亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の総和である.
(2)浮遊物質(SS)は,試料を孔径1μmのガラスファイバろ紙でろ過し,蒸発乾固したろ上の残留物の重量で表す.
(3)溶存酸素(DO)は,水中に溶解している分子状の酸素である.
(4)生物化学的酸素要求量(BOD)は,主として水中の有機物質が好気性微生物によって分解される際に消費される酸素量を表す.
(5)流入するリン化合物は,生活排水,畜産排水,工場排水等に由来する.
2023年
問題126正解(1)頻出度AAA
全窒素は,無機性窒素と有機性窒素の総和であり,無機性窒素がアンモニア性窒素,亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の総和である.(2023-126-1図参照).
出典 公益社団法人 日本建築衛生管理教育センター
「新建築物の環境衛生管理」(平成31年3月31日 第1版第1刷)中462
地球上の生物にとって窒素はタンパク質や核酸の主要構成要素であり,必須元素の一つである.汚水中の生物由来の有機性窒素は分解されてアンモニア性窒素となり,アンモニア性窒素は亜硝酸菌により亜硝酸に変化し,さらに硝酸菌により硝酸になる.硝酸は嫌気性の条件下で脱窒菌により窒素まで還元され大気中に戻る.
-(2) JIS K0102に規定されたSSの測定方法である(JISでは懸濁物質と称している).
-(3) DO(溶存酸素)[mg/L] 水中に溶けている分子状の酸素のことをいい,溶存酸素は水の自浄作用や水中の生物にとって必要不可欠のものである.溶解量を左右するのは水温,圧力,塩分などで,澄な水の飽和溶存酸素の濃度は20℃,1気圧で8.84mg/Lである.汚染度の高い水中では消費される酸素の量が多いので溶存する酸素量は少なくなるので,生物処理工程の管理や放流水の評価の際,重要な指標となる.
-(4) BOD(生物化学的酸素要求量)[mg/L]水中の有機物が生物化学的に酸化されるのに必要な酸素量のことで,生物化学的酸素要求量ともいう.生物化学的酸化とは,水中の好気性微生物が有機物を養源とし,水中の酸素を消費してエネルギー化,生命維持・増殖するとき,有機物が生物学的に酸化分解されることをいい,有機物が多いほど消費される酸素量が多くなる.したがって,BODが高いことはその水中に有機物が多いことを示し,化学的酸素要求量(COD)とともに水質汚濁を示す重要な指標で,BODの値が大きいと腐敗性が強くなる.
BOD は試料を20℃,5日間静置し,静置前と後の溶存酸素量をウィンクラー法(滴定法の一種)で測定し,その間に消費された溶存酸素量[mg/L]で表す.
ちなみに,COD(化学的酸素要求量)[mg/L]は,水中の被酸化性物質(有機物)を酸化剤で化学的に酸化したときに消費される酸化剤の量を酸素に換算したもの.COD が高いことはその水中に有機物が多いことを示し,生物化学的酸素要求量(BOD)とともに水質汚濁を示す重要な指標.酸化剤としては過マンガン酸カリウム,重クロム酸カリウムなどがある.
CODはBODにくらべて短時間に測定できることや,塩分,植物プランクトンの光合成などによる影響を受けないなどの利点から,環境基準では海域および湖沼の汚濁指標として採用されている.
CODとBODの間には一定の関係がある場合が多く,一般に BOD/COD比 が高い場合は,汚水処理法として生物処理法,この値が低い場合は物理化学処理法が採用される.
-(5) 生物が生活を営むために必要な塩類(化合物),すなわち珪素,リン,窒素等の塩類,アンモニウム塩,Co,Zn,Cu,Mn,Fe 等の微量元素を含む塩を栄養塩類という.窒素,リン,珪酸を特に栄養塩類という場合もある.
生活排水,畜産排水,工場排水等の流入により過剰な栄養塩類で富栄養化した海域では異常発生したプランクトンによって海水が赤っぽく見える「赤潮」と呼ばれる現象を引き起こすが,死んだ後は海底に沈み,分解される時に大量の酸素が消費される.こうして発生した酸素濃度の低い海水が海面に上昇した時,青白く見えることから「青潮」と呼ばれる.