2023年

問題169ダニに関する下記の文章に該当する種類として,最も適当なものは次のうちどれか.

梅雨時などの高温・多湿時に,畳や保存食品から大発生する場合がある.ヒトを刺したり吸血することはなく,アレルゲンとしての重要性も比較的低いが,大量発生により不快感や恐怖感を与えることがある.

(1)フトツメダニ

(2)カベアナタカラダニ

(3)ワクモ

(4)ケナガコナダニ

(5)コナヒョウヒダニ

2023年

問題169正解(4)頻出度AAA

ケナガコナダニは屋内塵性のダニで新しい畳によく発生する.

ダニの生息する場所は多岐にわたるが,主にダニの食性で決まり,寄生生活性と自由生活性の2つに分けられる.

ダニの種類については2023-169-1表参照.

2023-169-1表主なダニの種類
種類 名称 被害 備考
動物寄生性のダニ イエダニ 吸血 ネズミに寄生する.
スズメサシダニ
トリサシダニ
ワクモ
吸血 スズメなどの野鳥やニワトリに寄生する.軒下などに営巣した野鳥の巣から室内に入りこむ.トリサシダニやスズメサシダニの被害は,野鳥の巣立ちの時期に集中する.
マダニ 吸血 マダニ類は飼い犬が宿主になって庭先で発生することがある.マダニ類は雌雄とも,幼虫,若虫,成虫の全ての発育段階で吸血する.マダニは,第1脚の先端部分に温度や炭酸ガスを感知する器官をもち,吸血源動物が近づいてくるのを,植物の葉の先端部で待ち構えている.
シラミダニ 刺咬 シラミダニはカイコに寄生する.偶発的に人を刺すが吸血はしない.
肉食性のダニ ツメダニ 刺咬 ツメダニは他のダニやチャタテムシを捕食するが,動物吸血性ではない.まれに人を刺す.
屋内塵性のダニ ヒョウヒダニ類
コナダニ類
ホコリダニ類
アレルゲン ヒョウヒダニ類が優占種である.
ケナガコナダニは新しい畳に大量発生して不快感を与える.保存食品からも発生する.
これらのダニの発生は多分に温湿度依存的で,25℃以上,60%以上の湿度でよく発生する.長期の乾燥状態には耐えられない.
植物由来のダニ ハダニ類 不快感 ヒメハダニなどが鉢植の花などとともに建築物内に持ち込まれ,屋内でも発見される.ハダニ類は赤,黄系の派手な色の種類が多く,不快感を起こすがヒトを刺すことはない.
カベアナタカラダニ 不快感 春季にビルの外壁面を赤くするほど集団発生することがある.室内に侵入することもあるが,人への直接的な被害は及ぼさない.
人寄生性のダニ ヒゼンダニ 疥癬かいせん ヒトの皮膚に内部寄生し,疥癬症を起こす.その寄生数が爆発的に増加すると,「角化型疥癬」と呼ばれ,ヒトからヒトヘの感染力も増し,高齢者施設や病院での集団発生が問題となる.

ダニの生態については次のとおり.

ダニの体は,口器があるがく体部と,頭,胸,腹が融令した胴体部の2つに分かれていて,はっきりした頭部はなく,触覚も持たない.
ダニは分類学的にはクモに近く昆虫ではない.卵→幼虫→若虫→成虫と成長する.幼生では脚は3対,若生,成虫で4対である.

ダニの防除については次のとおり.

1.吸血性ダニ類の殺虫剤感受性は高く,一般に使用されている有機リン剤やピレスロイド剤のほとんどは有効であり,残留処理や,室内全体で被害が発生している場合は,煙霧,ULV,燻煙剤等でも対応できる.

2.動物寄生性のダニ
1)イエダニ
ネズミの巣の除去を行う.屋内にあってはゴキブリに準じた煙霧処理を行う.
2)鳥に寄生するダニ
巣の除去を行うが,鳥の卵ごと除去する場合には,市町村長又は都道府県知事の許可が必要となる.
3)ペットの犬にマダニ類が発見された場合には,獣医師に動物体表のマダニ類を駆虫してもらう.

3.屋内塵性のダニ
屋内塵性のダニの薬剤感受性は一般的に低く,十分な効果が期待できる殺虫剤は少ない.
これらのダニの発生は多分に温湿度依存的で,25℃以上,60%以上の湿度でよく発生する.長期間の乾燥には耐えられないので,室内を通風・除湿によって乾燥し高室温を避ける.
ヒョウヒダニなどは人の垢やフケが餌になっているので室内の除塵・清掃を頻繁に行う.
ツメダニ類は殺虫剤に対する感受性が極めて低く,薬剤による対策はあまり期待できない.他のダニやチャタテムシ等の小昆虫を捕食して繁殖するので,餌となるダニ,小昆虫が増殖しないように除塵を徹底し,高温・多湿を避けることが効果的である.

4.ダニに属するツツガムシやマダニには忌避剤が効果的である.

5.植物由来のダニには,園芸用の殺ダニ剤を用いる.衛生用の薬剤は植物を枯らすことがある.