2024年
問題171害虫やその防除に関する次の記述のうち,最も不適当なものはどれか.
(1)ニクバエ類の雌成虫は,糞や腐敗した動物質などに卵を産み付ける.
(2)チョウバエ類の発生源は,建築物内では浄化槽や排水溝などである.
(3)ユスリカ類が建築物内の排水溝やプールから発生することがある.
(4)チャタテムシ類の防除では,カビの発生を抑えることも必要である.
(5)ネッタイトコジラミが国内の宿泊施設で発見された事例がある.
2024年
問題171正解(1)頻出度AAA
ニクバエ類は,卵ではなく幼虫を産む卵胎生のハエである.
出題された色々な昆虫は,2024-171-1表参照.
分類 | 種類 | 被害,発生源等 | 出題された防除法等 |
ハエ類 | イエバエ | 現在のイエバエの主要な発生源は豚舎,鶏舎,牛舎等とごみ処理場である.腸管出血性大腸菌O157の媒介が疑われる. | ―― |
クロバエ類 | 大型のハエで,気温の低い時期に発生する.発生源は腐敗した動物質. | ―― | |
キンバエ類 | 食物等に産卵して,消化器ハエ症の原因になる.腫瘍(シュヨウ)部や外傷部に産卵することもある. | ―― | |
ニクバエ類 | ニクバエ類は,卵ではなく幼虫を産む卵胎生のハエである. | ―― | |
コバエ類 | ノミバエ類 | 脚はよく発達し,素早く歩行する.発生源は腐敗した動物質で浄化槽の表面に浮いているスカムから発生する. | 光に集まる走光性を示す. |
ショウジョウバエ類 | キイロショウジョウバエが代表種.発生源は,主に腐敗した植物質や果物(生ごみ). | 光に集まる走光性を示す. | |
チョウバエ類 | ホシチョウバエ | 蚊の仲間(カ亜目)に属する.幼虫は汚れた川,下水溝,下水処理場の散水ろ床等で発生する. | 幼虫はし尿浄化槽のろ床やスカム中に発生し,水中深くに潜ることはない.水面近くに重点的に殺虫剤を散布. |
オオチョウバエ | 幼虫の発生源は,下水溝,建築物の浄化槽等で,浮遊しているスカムや壁面に多数の幼虫が見られる. | 光に集まる走光性を示す. | |
ニセケバエ類 | ナガサキニセケバエ | 幼虫の発生源は動物糞や腐敗植物質等で,建築物内では,植木鉢等の肥料に用いられる油粕等から発生する. | ―― |
ユスリカ類 | セスジユスリカ | 不快害虫.プールから発生する種類もある. | 網戸,電撃式殺虫器 |
チャタテムシ類 | コナチャタテ類 | 畳の床藁,干物,乾麺等の乾燥食品やこれらに発生するカビが餌.ドライフラワーや乾燥植物からも発生. | 温度25℃以上,湿度80%以上の環境を継続させないようにする.エサのカビの発生を抑える. |
トコジラミ類 | トコジラミ | カメムシの近縁種.夜間吸血性で,昼間は壁,柱等の隙間やペット裏等に潜んでいる.幼虫,成虫,雄,雌ともに吸血する. | ―― |
ネッタイトコジラミ | ネッタイトコジラミは近年東京都内の宿泊施設でも散見されている. | ||
シラミ類 | コロモジラミアタマジラミケジラミ | それぞれ,下着,頭(毛髪),陰毛に寄生して吸血する.吸血後の掻痒感が強い.コロモジラミは発疹チフスを媒介する. | ―― |
シバンムシ類 | タバコシバンムシジンサンシバンムシ | 加害するのは幼虫で,麺類,菓子類等のほか,動物の剥製,畳等が加害される. | 性フェロモン等の誘引剤を用いたトラップが市販. |
ハチ類 | シバンムシアリガタバチ | タバコシバンムシやジンサンシバンムシの老齢幼虫に,シバンムシアリガタバチの幼虫が体表に外部寄生し,夏期にこのハチが羽化して,室内で刺されることがある. | ―― |
スズメバチ類 | ハチ毒には,痛みをもたらすアミン類の他に,アレルギーを起こす酵素類が含まれている.ハチ刺症では,時として生命にかかわる重篤なアレルギー症状(アナフィラキシーショック)を起こす.ツマアカススメバチは特定外来生物に指定されている(2015年). | ||
カツオブシムシ類 | ヒメマルカツオブシムシヒメカツオブシムシ | 幼虫は,主に羊毛製品,ジュウタン,絹織物,動物の剥製,乾燥食品などを食害する. | 繊維製品は,加熱乾燥やドライクリーニング.フェロモン等の誘引剤を用いたトラップが市販. |
ヒラタキクイムシ類 | 木材中に産卵され,孵った幼虫がナラ材などの広葉樹を食害する.穀物も加害することが多い. 針葉樹材,広葉樹材の心材は食害しない. |
産卵防止には塗装,殺虫剤の残留処理を行う. | |
ノミ類 | ネコノミ | ほとんどの被害がネコノミによる.吸血するのは成虫のみ.ノミはシラミと異なり,飢餓に耐えることができる.ネコノミの発生源対策は,宿主のねぐらや常在場所に対して行うと効果的である. | ノミの幼虫は宿主のねぐらのダンボールやぼろ布,周辺の砂地でゴミの中などに含まれている有機物を食べて成長する. |
アリ類 | イエヒメアリ | 建築物内等に生息している代表種.カーペットの下,壁の割れ目などに巣を作る. | ヒドラメチルノンやホウ酸,フィプロニルなどを有効成分とした食毒剤が有効. |
アルゼンチンアリ | 砂糖,花の蜜,果物等を好む.外来種で特定外来生物である. | ||
ヒアリ | 特定外来生物に指定されている.各地の港湾地区で発見されており,刺咬による皮膚炎,アレルギー障害の被害が懸念される. | ―― | |
カメムシ類 | クサギカメムシ | 越冬のために屋内に侵入する.臭腺から臭いを出すので不快昆虫として嫌われている. | 侵入場所となる窓枠などにシフェノトリンを処理する. 密閉性の高い窓サッシで侵入を防止する. |
マルカメムシ | 越冬場所を求めて屋内に侵入したり,洗濯物などに多数付着することがある. | 餌となるクズ等のマメ科の雑草の除去が有効. | |
イガ類 | イガはチョウ目に属する小型の蛾で,幼虫が羊毛製品,動物の剥製,動物性乾燥食品等を食害する. | 繊維製品には,加熱乾燥やドライクリーニングが有効. | |
メイガ類 | ノシメマダラメイガ | メイガ類はチョウ目に属する小型の蛾で,幼虫が貯穀・菓子類を食害する. | 性フェロモンを用いた誘引トラップが市販. |
クモ類 | セアカゴケグモ | 刺咬により激しい痛みと神経系の障害を起こす. | ―― |