2023年
問題173薬剤とその薬剤を有効成分とする製剤との組合せとして,最も不適当なものは次のうちどれか.
〔薬剤名〕〔製剤の種類〕
(1)イミプロトリン ゴキブリ用食毒剤
(2)イカリジン 吸血害虫用忌避剤
(3)フェノトリン 炭酸ガス製剤
(4)ジクロルボス 樹脂蒸散剤
(5)トランスフルトリン 常温揮散製剤
2023年
問題173正解(1)頻出度AAA
イミプロトリンは超速効性を示すピレスロイド剤で,食毒剤ではない(前問解説参照) .
食毒剤や炭酸ガス製剤など,製剤(剤型)については,2023-173-1表参照).
油剤 | 油剤は有効成分を灯油(ケロシン)に溶かしたものが多い.有効成分は1%程度のものが多い.そのまま使用できる便利さがある.直接散布する空間処理,残留処理以外に煙霧などに用いる.引火性があるので火気に注意する必要がある. ※消防法危険物第4類第2石油類として指定数量1,000L(非水溶性),2,000L(水溶性)以上は法の規制を受ける. |
乳剤 | 有効成分がケロシン,キシレンなどの溶剤にとかされさらに乳化剤を加えてあり,使用時水で希釈して使用する.希釈すると白濁※する.希釈後は1回1回使い切るようにする(希釈後は長期間の保管は好ましくない). 残留噴霧処理に使用する. 空間処理のULV処理用のピレスロイド専用乳剤がある. |
懸濁剤 | 基本的には乳剤と同じ製剤であるが,有効製剤を特殊な物質で被覆したり,炭末のような物質に吸着させてある製剤で,フロアブル剤ともいう.
残効性の強化のために有効成分をポリアミンなどの物質で被膜した製剤はMC剤(マイクロカプセル化剤)という.他の乳剤と同じように使用時水で希釈して使用する. |
粉剤 | タルクのような鉱物性の粉末を増量剤とし有効成分を混ぜてあり,そのまま使用できる.処理場所を選ばないと周辺に粉末が散るおそれがある(厨房などでの使用は好ましくない).粉末が昆虫の体表を傷つけ効果を発揮したり,付着した粉を昆虫がなめて食毒効果を持つこともある.ボウフラなどに使用する粉剤では水面に薬剤が浮遊する浮遊性粉剤もある. ※タルク(滑石).マグネシウムのケイ酸塩を主成分とし,最も柔らかい鉱物の1つ. |
粒剤 | 蚊幼虫等,水中に生息する害虫を対象にした径2~5mmの粒状の製剤.崩壊性と非崩壊性の製剤がある.前者は有効成分を比較的短い日時で放出するが,後者は多孔質の粒子から徐放的に放出されるので,残効性が期待できる. |
水和剤 | 粉剤に乳化剤を加え,水で希釈して懸濁させて使用する製剤.有効成分の表面残留性が高いので残留噴霧処理に向くが,我が国では散布面を汚すという理由で室内ではあまり利用されない.配電盤などにも不適. |
薫煙剤 | ジクロスボスやピレスロイドなど,速効性と致死効力が高い薬剤を助燃剤によって燃焼させ,煙として屋内に飛散させ,飛翔性昆虫を殺虫する.蚊取り線香もこの範疇に入る. |
蒸散剤 | 蒸散性の高い有効成分を,水や空気によって起こした反応熱や電気で熱して気化させ空中に飛散させて使用する.電気蚊取り,液体蚊取りもこの種類である.自然蒸散性の高いジクロスボスでは,合成樹脂に含浸させ,自然状態で気化させて使用する樹脂蒸散剤がある.使用する場所のある程度の気密性が必要である. |
常温揮散製剤 | 常温揮散の高いトランスフルトリンを用いたワンプシュ式やファン式の蚊取りとして商品化されている. |
忌避剤 | 忌避剤は一般に殺虫力は示さないが,ダニ,蚊,ブユ(ブヨ)などからの吸血を避けるために皮膚や衣服に処理するスプレータイプの製剤が普及している.ディート(deet:ジエチルトルアミド),イカリジンなどがある. |
食毒剤 | 有効成分を餌材に混合して,食毒(ベイト)として使用する.ゴキブリ用の製品が多数ある.ヒドラメチルノンが代表的. |
その他 | ピレスロイドを噴射剤(LPG:液化プロパンガス)とともに300cc程度のボンベに封入したエアゾール剤は,ハエ,蚊には空間噴霧,ゴキブリには直撃用,残留塗布用として用いられる. フェノトリンなどのピレスロイド剤を液化炭酸ガスとともにボンべに封入した炭酸ガス製剤は,専用の噴射装置を必要とするが,粒子径が細かく,ULV的な処理が行える. |
※ 水性乳剤と称する,水を加えても白濁しない薬剤が存在する.